冷え性改善 〜東洋医学編〜
休暇で外の冷気にさらされっぱなし、または家にいて暖房器具で温まってばかりではありませんか?冬は外からの冷えと、家の外と中の寒暖差から自律神経の乱れが起きやすくなります。食へのこだわりvol.5では冷え性改善のための食事のポイントや生活のポイントについてお話ししました。今回はこの「冷え」についてより詳しく、東洋医学の考え方を交えながら3つのテーマでお話していきたいと思います。
目次
1. 冷えって何?
そもそも「冷え」とはどのような状態なのでしょうか?それは、「多くの人が寒さを感じない程度の温度で、手や足、下半身、腰などの体の一部、もしくは全身が冷えており、つらいと感じている事」です。そしてこの状態を「ひえしょう」と言います。「ひえしょう」は2つの漢字で表される事をご存知でしょうか?それは「冷え性」と「冷え症」です。1997年北里研究所東洋医学総合研究所で、日本初の「冷え症外来」を開設した当時は「冷え性」という表現が一般的でした。西洋医学では「冷え」は病気と捉えてはおらず、冷え性=冷える性質、つまり「冷えは体質だから、しかたがない」と思われていました。しかし、東洋医学では「冷えは病気のサインである」と考えられ、病気ではないけれど不調を感じるような病気の前段階を未病ととらえ、冷えは未病の最たるものとされています。そこで、「冷えは病気の原因になる」という意味を込め、「症」という字を使っているのです。最近では「冷え症」という表現も一般的になり、それだけ「冷え」で悩んでいる人が多いということがわかります。
2. どうして冷えちゃうの??
日本には四季があり、季節によって気温は変化します。私たちの体は優れもので、基礎代謝の量を変えることで、体温調節をして気温の変化に対応しています。しかし、これらを狂わせる「冷え」のきっかけは1年中潜んでいます。
● 春 ・・・ 1年で一番寒暖差が激しく体を冷やしやすい
● 夏 ・・・ 暑いはずの夏も冷房の影響で体は冷え冷え
● 秋 ・・・ 夏の冷房で冷え切った体に寒暖差が追い打ちをかける
● 冬 ・・・ 本格的に寒くなる季節で朝から晩まで冷える
これらは全て、体温調節機能を乱す外からの「冷え」です。冷房や暖房器具は、私たちの生活に必要不可欠な物です。しかしその快適さが「冷え」の原因となり、体温調節機能を狂わせています。最近では冬の冷えよりも夏の冷えのほうが大きな問題と言われています。
夏は血管を広げ、熱を放散するようにしてバランスをとるようになっています。そして汗をかき、毛穴も広がっています。そこに冷気が直撃すれば、体は熱を奪われ、冷えがどんどん入り込んでしまいます。その一方で太陽が照りつける外に出れば熱気が体を襲います。1日のうちに、夏と冬の気温を交互に体感するような事も起こり、それに合わせて血管や汗腺も収縮と拡張を何度も切り替えなければならなくなります。これにより、体温調節機能が狂ってくるのです。その一方で冬は暖房をきかせすぎる事による「冷え」が問題となります。東洋医学的にみると冬はエネルギーを静かに蓄える時期と考えます。
冬は適度に寒い方が体によく、寒さによって身を引き締める事で、力強いエネルギーが育つと言われています。冬の体は血管を縮め、熱が外に逃げるのを防ぐようになっているのです。過度な暖房は自律神経を乱す事になり、体温調節機能がうまく働かなくなってしまいます。そして、食べ物や飲み物などの口から入ってくる「冷え」も体温調節機能に大きく影響しています。飲み物は、年間を通して井戸水くらいの冷たさ(14~15度)が体に入ってよい最低の温度だとされています。しかし便利になった現代では、1年中どこでも冷たい飲み物をすぐに飲めるようになりました。家でも水、お茶、ジュース、ビールなど多くの飲み物を冷蔵庫で4~5度くらいに冷やして飲まれています。井戸水と比べて、その差10度。この10度の差が体を内側から冷やしていく原因となるのです。また、偏った食生活、ダイエット、甘いもの(砂糖)、運動不足なども冷えの原因となります。冷暖房、冷蔵庫・・・便利になったぶん、「冷え」への影響が増していると考えられます。
先ほどから「冷え」へは体温調節機能が大きく影響しているとお話してきましたが、体の中ではどのようなことが起こっているのでしょうか?私たちの体には、37度前後の体温を維持する体温調節装置が備わっています。例えば、外気温が下がり寒くなると、皮膚にあるセンサーはこの情報をキャッチして脳にある体温調節中枢に伝えます。これを受けて体温調節中枢は、体内でつくられる熱の量や放出する量を調節します。このように脳へ情報を運んだり、脳からの指令を伝えて血管などの体の機能を働かせたりしているのが、自律神経です。暑い時と寒い時では自律神経の働きが変わります。自律神経は体中に張りめぐらされていて、オンとオフを切りかえながら体の機能を調節しています。「冷え」に長年さらされ続けていると、自律神経の働きが乱され体温調節機能が狂ってしまい、さまざまな不調を引き起こしてしまいます。
3. あなたの「冷え」は何タイプ?? 〜自己診断チェックリスト〜
冷え」は、体にさまざまな不調を起こします。東洋医学の視点から6つの体質のタイプをあげました。一番多くあてはまる項目があるタイプが、あなたの現在の体質で「冷え」の原因です。一度自分でチェックしてみましょう!
4. ① 気虚(ききょ)
■気が足りない「気虚」の人は・・ 気とは、目に見えない力、エネルギーです。顔色が青白く、ひょろりとしていて、見るからに疲れている感じで、気持ちも減退していて、活発に乏しい人です。すぐに風邪をひいたり、花粉症などのアレルギー症状が現れやすくなったりします。
■気虚の人の養生法 1日のスタートを切る朝食がエネルギーのもとです。気を補うには、きのこを取り入れましょう。また過労や睡眠不足を減らし、日常生活から変えていくことが大切です。
5. ② 気滞(きたい)
■気がとどこおった「気滞」の人は・・ もんもんとして気がめいり、気のめぐりが悪くなってバランスを崩します。主に自律神経系の緊張やコントロールができなくて不安定な状態。ストレスを感じると、みぞおちやあばら骨のあたりが張ることがあります。
■気滞の人の養生法 一番の問題はストレスです。自分に合ったリラックス方法を見つけ、生活の中に取り入れること。不規則な生活や極度の緊張は避けましょう。
6. ③ 気逆(きぎゃく)
■気が逆上している「気逆」の人は・・ 感情が激しく、いつもイライラ気味です。気は、ふつう上から下へ流れますが、このタイプは下から上に逆流してしまい、冷えのぼせのようになります。また頭痛、めまい、動悸、激しい咳、呼吸困難、吐き気や嘔吐、ゲップなども挙げられます。
■気逆の人の養生法 頭に気が溜まってしまい、スムーズに体内に流れないことが問題です。おすすめは軽い運動。アルコール、香辛料などの摂りすぎは、エネルギーの逆流を促進してしまいます。
7. ④ 血虚(けっきょ)
■血が足りない、薄い「血虚」の人は・・ 「血虚」の血とは血液のことで、女性の場合は月経があるため不足しがちです。血の働きも弱いため、貧血の傾向やめまい、しびれやけいれんなどの症状も現れやすいです。体の動きも悪く、いつも血色がさえません。
■血虚の人の養生法 女性は特に月経中と、その後の時期が要注意です。無理をせず、規則正しい生活リズムを心掛け、鉄が豊富な食材を意識して摂るようにしましょう。鉄の吸収をよくするタンパク質、ビタミンC、造血を助けるビタミンB群も同時に摂ります。
8. ⑤ 瘀血(おけつ)
■血のめぐりが悪い「瘀血」の人は・・ ストレスや冷えが原因で血のめぐりが悪くなり、血液中によごれが溜まっている状態です。肩こり、頭痛、冷えのぼせ、皮下出血やあざのできやすさ、女性の場合は生理痛や生理不順などが挙げられます。
■瘀血の人の養生法 血行を良くすることが大切です。
軽い運動を習慣づける、体を温める食べ物を摂る、体を冷やさないことが養生になります。
9. ⑥ 水毒(すいどく)
■水の流れが悪く停滞している「水毒」の人は・・ 水とは体液のことで、涙や鼻水も含まれています。体の水はけが悪いので、むくみやすい状態です。寒い日や気圧の低い日、湿度の高い日などは、とどこおった体液でさらに冷やされ、不調が出やすくなります。
■水毒の人の養生法 冷えを体内に取り入れないように、ガードが必要です。夏の冷房は要注意。生野菜、甘いもの、果物の摂りすぎも禁物です。冷たくて甘いアイスクリームやシャーベットは、体を芯から冷やします。気持ちのよい汗をかいて、水はけをよくしましょう。
10. 食事で体を温めよう 〜「冷え」ない体づくりを〜
東洋医学には自然界のあらゆるものは「陰」と「陽」に分けられるという考え方が存在します。食べ物の場合は体を冷やす「陰性食品」と体を温める「陽性食品」に分けられます。陰性食品は夏が旬、暑い土地が原産、色が薄い、水分を多く含む等の特徴があります。また、農薬や添加物を多く含む食品も体を冷やすとされています。一方、陽性食品は冬が旬、寒い土地が原産、色が濃い、水分が少ない等の特徴があります。どちらにも属さず、体を冷やしも温めもしない食品を「間性食品」といいます。間性食品は主食になる食品が多いのが特徴です。人類の長い歴史の中で、体に及ぼす作用が緩やかなものを主食として選択してきたのではないかと考えられています。
11. 陰性食品・間性食品・陽性食品
冷え予防・改善には陽性食品を日々の食生活に取り入れるようにしましょう。飲み物も温かいものか常温のものを選ぶとよいでしょう。また、陰性食品も調理方法などの工夫次第で陽性食品に近づけることができます。例えば、生野菜は加熱したり、塩を加えて漬け物にしたり、干したりすることで体を温めるものに変化します。また、冷や奴に生姜や醤油をかける、豆腐を味噌汁に入れる、すいかやトマトに塩をかけて食べるのも体を冷やしすぎないための昔からの知恵なのです。体を温める陽性食品を中心に、バランスの良い食生活を心掛けることが大切です。
いかがでしたか?「冷え」の原因の多くは、ちょっとした生活習慣の積み重ねによるものです。「冷え」を改善するには、食材選びのほかに軽い運動や服装、入浴法なども効果的です。「冷え」は寒くなるにつれてひどくなります。日々の生活に、タイプ別養生法や、紹介した体を温める食べものなどを取り入れて、寒い季節を乗り切りましょう。
今回の担当は アルカ管理栄養士 コラムチームでした。
(参考文献:よくわかる最新医学 冷え症・貧血・低血圧、オトナ女子のための"ホッ"と冷えとり手帖)