いいことアルカも食と健康

2021年5月 1日

スポーツ栄養~ベストな状態で競技に臨もう~

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スポーツを行ううえで日々のトレーニングはとても重要ですが、栄養のとれた食事をすることも、競技に向けた体づくりやベストコンディションで試合に臨むために大切です。

今回は、栄養面からスポーツとの関わりについてお話します。

1. スポーツするうえでの栄養の役割

①身体を動かすエネルギー源

身体を動かすにはエネルギーが必要です。

そのエネルギー源となるのが、糖質脂質です。激しい運動になると脂質では対応出来ず、糖質だけでエネルギーを作りだします。糖質の蓄えが尽きると、タンパク質を利用して新たにエネルギーを作ろうとします。筋肉中のタンパク質が利用されると、筋肉量の低下につながるためタンパク質に頼らないエネルギー作りを行えることがベストです。

そのためには糖質を不足させないための食事・補給が大切です。 

 

【ポイント】食品によって糖の吸収速度が違うため、状況に適した糖質の補給を行う 

運動前の軽食(開始の2時間半以上前):おにぎり、パン(あんぱんなど)、うどんなど

運動前後、次の試合までの短時間での補給:果物(バナナなど)、スポーツドリンク、果汁100%ジュース、ゼリータイプの栄養補助食品など

 

※運動前、運動中の脂質の摂取は胃に負担をかけるので避けましょう。

 

   

 

◆糖質からエネルギーを作るには、ビタミンB₁も必要!

ビタミンB群(ビタミンB₁、B₂、B₆、B₁₂、ナイアシン、パントテン酸など)は糖質、脂質、タンパク質からエネルギーを作るサポートをしています。糖質のエネルギー代謝を手助けしているのがビタミンB₁で、豚肉や玄米などに多く含まれています。

運動量が増えた分ビタミンB群の摂取も増やさないと、エネルギーを効率よく作ることが出来ないため、運動量に見合ったビタミンB群の摂取が必要です。

  

【ポイント】ビタミンBは摂りすぎても排出されるため、こまめに摂取すること!

  

 

② 身体を作る

体内では、古いものから新しいものへ作り変える作業が行われています。これを新陳代謝といいます。筋肉や骨でも、新陳代謝が行われており、より強い身体を作るためにはそれぞれポイントがあります。

  

◆強い筋肉づくり

筋肉を作る材料となるのはタンパク質運動による刺激です。

トレーニングによってダメージを受けた筋肉の修復にタンパク質を必要とします。タンパク質の摂取により筋肉が回復したら、またトレーニングを行って筋肉に刺激を与えます。この積み重ねで強い筋肉を作り上げていくのです。

※タンパク質の摂りすぎは、肝臓や腎臓に負担がかけるため、トレーニング量に合った適切な摂取をしましょう。

 

◆丈夫な骨づくり

怪我の予防のためにも強い骨づくりが大切です。

骨を作る材料となるのが、カルシウム、マグネシウム、リンです。主成分であるカルシウムは吸収率が低く、汗とともに流れ出てしまうため、吸収を高めるビタミンD一緒に摂取することがおすすめです。そのうえで、運動を行って骨に負荷をかけることで丈夫な骨を作りあげます。

 

栄養素

多く含む食品

カルシウム

牛乳、乳製品、小魚など

マグネシウム

海藻類、大豆製品など

リン

清涼飲料水、加工食品、インスタント食品など

※摂りすぎには注意

ビタミンD

脂身の多い魚、キノコ類など

※ビタミンDの摂取+日光を浴びることで効果が高まります

【ポイント】吸収率の低いカルシウムは、回数を分けて摂取することで効率の良い吸収を!  

  

 

身体の機能調整を行う

◆酸化から身体を守る

激しい運動やストレスなどにより、体内で活性酸素と呼ばれる物質が生成されます。活性酸素の増加により細胞を酸化させ、免疫力の低下や疲労など競技にも影響がでてしまいます。

この活性酸素を退治するには、抗酸化作用のあるビタミンC、E、カロテノイド(体内でビタミンAとなる)を取り入れた食事がおすすめです。

 

【ポイント】抗酸化物質が多く含まれる食品

       

栄養素

多く含む食品

ビタミンC

野菜・イモ類:キャベツ、ピーマン、じゃがいも(熱に強い)など

※水溶性のビタミンCは「茹でる」「煮る」場合、短時間にする。

また熱にも弱いため、火に通す時間を短くしたり、電子レンジを利用することで栄養素の損失を抑えることができます。

果物:いちご、キウイフルーツなど

カロテノイド

緑黄色野菜:にんじん、かぼちゃなど

果物:マンゴー、オレンジなど

ビタミンE

ナッツ類:アーモンド、落花生など

野菜:ブロッコリー、かほちゃ、アボカドなど

植物油:ベニバナ油、ひまわり油など

 

◆貧血

スポーツ選手に多いと言われています。主な原因は、またはエネルギーの不足です。

胃腸の調子を整えたうえで、栄養バランスのとれた食事を摂り、エネルギー不足を防ぐことや鉄をしっかり摂ることが大切です。鉄には、レバー、赤身の魚、貝類など動物性食品に多いム鉄と、ひじき、ほうれん草、小松菜など植物性食品に多い非ヘム鉄があります。

ヘム鉄の方が吸収率は高いですが、非ヘム鉄も他の食品と組み合わせることで吸収率を高めることが出来ます。

   

【ポイント】一緒に摂取すると鉄の吸収が高まる食材/吸収を下げる食材

吸収を高める食材:野菜、果物など(ビタミンCを多く含む食材)

吸収を下げる食材:お茶やコーヒーなど(タンニンを多く含む食材)、玄米、ライ麦パンなど(フィチン酸を多く含む食材) 

 

                  

2. バランスの良い食事

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スポーツを行ううえで栄養素は、「エネルギー源となる糖質、脂質、タンパク質」、「体づくりの材料となるタンパク質、脂質、ミネラル」、「体の免疫や代謝などの調整を行うビタミン、ミネラル、タンパク質」として、重要な役割を担っています。競技を良い状態で行えるために、栄養バランの良い食事を摂ることが大切です。

  

バランスの良い食事をするためには・・・

【ポイント①】バランスの摂れる食事内容にする

 ■1回の食事で、主食+主菜+副菜+副々菜+果物+牛乳・乳製品を揃える

(1回の食事で摂ることが難しい場合は、間食を取り入れて補う)

 ■1日の食事を通して、色々な食材を取り入れる

(食材によって含まれる栄養素の種類や量が違うため、毎食の食材を変えることで、様々な栄養素が摂取できる)

 

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※食事からの必要な栄養の摂取が難しい場合には、サプリメントの使用も有効ですがサプリメント使用前に、食事から摂取出来る工夫も考えてみましょう!

・エネルギーが必要な時は、油(脂質)を取り入れた食事にする

・ビタミンが必要な時は、栄養価の高い緑黄色野菜を食べる。また蒸す、炒めるなどでかさを少なくする など・・・ 

 

【ポイント②】運動量に応じて、自分に適した量を食べる

 ■エネルギーバランスのチェック方法

毎朝、起床して排尿後すぐに体重測定を行う!

前日とさほど差がなければ、消費した分のエネルギーを補うことができ、消費量と摂取量が等しく、エネルギーバランスが保たれていると考えられます。

 ■その他の栄養素のチェック方法

体調の変化による判断

 

自分に適したエネルギーや栄養素の量が、過度に不足している場合や摂りすぎにより、やせや肥満、体脂肪や筋肉量などにも影響したり、病気や怪我などに繋がることも考えられます。良いコンディションを保つためにも、「栄養をバランスよく摂ること」、またその日の活動量に応じて、「食事の量を調整する力」を身につけることが大切です。

難しく考えずに、出来ることから初めてみましょう。

 

 

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ここまで栄養についてお話してきましたが、水分補給も大切です。

体内の水分は、体温調節など体が機能するための重要な役割を担っています。運動して汗をかくと、水分と一緒に電解質(ナトリウム、塩素、カリウム、マグネシウム、カリウムなど)も流れ出てしまいます。水分だけを補給すると、体内の水分量と血中ナトリウム量のバランスが崩れてしまいます。バランスを保つために余分な水分を尿として排泄するため、結果として水分補給が上手く行えていないことになります。そのため、水分補給時は電解質の補給も必要になります。

スポーツドリンクには、汗をかくことで失われたナトリウムを含む電解質、エネルギー源となる糖質が含まれているため、水分補給に適しています。喉が渇き切る前に補給することがポイントです。

※1時間以内の運動の場合、食事からの時間がさほど経ってなければ糖質の補給は必要ありません。

 

3. まとめ

今回はスポーツと栄養の関りについてお話させて頂きました。競技をベストな状態で行えるように、食事・補給の際は、栄養バランスがとれているか、状況に適した補給が出来ているかなど、気にかけるきっかけとなれば幸甚です。

 

今回は栄養士のTが担当しました。

 

 

 参考文献:「理論と実践 スポーツ栄養学」

鈴木志保子 著 日本文芸社

「未来のトップアスリートのための体感型スポーツセミナー2019」 

公益社団法人 日本栄養士会

「基礎から学ぶ!スポーツ栄養学」 

鈴木志保子 著 ベースボール・マガジン社

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