熱中症を予防して厳しい暑さを乗り切ろう
こんにちは。アルカ管理栄養士のMです。
梅雨明け以降から気温がぐんぐん上昇し、特に8月は毎年記録的な猛暑が続きます。そんなこの時期に注意したいのが「熱中症」です。熱中症は暑い屋外だけでなく、室内でも起こります。現在はコロナ禍によりご自宅で過ごす時間が増えているかと思いますので、室内での熱中症も増えると考えられます。また、マスク着用による熱中症も心配です。
今回は、熱中症とはどのようなものなのかや、熱中症の予防のポイントについてお話ししたいと思います。
1. 熱中症とは
気温や湿度の高い環境では、私たちは体温を一定に保つために汗をかくことで熱を逃がしています。ところが、汗をたくさんかきすぎると、体内の水分と塩分が減少して体温調節がうまくできなくなり、からだに熱がこもってしまいます。そして体温が異常に上がり、めまいや立ちくらみを初めとした様々な症状が現れます。このように体温が上昇して起こるからだの不調を熱中症といいます。
2. 熱中症が起こりやすい条件
熱中症は、毎年6月~9月ごろまで多くの人が発症します。熱中症といえば、暑い屋外での作業や運動中に起こるイメージがありますが、室内での発症も少なくありません。熱中症が起こる条件には、「環境」「からだ」「行動」によるものがあります。
環境 | からだ | 行動 |
・気温が高い ・湿度が高い ・風が弱い ・日差しが強い ・閉め切った室内 ・エアコンがない ・急に暑くなった日 |
・高齢者、乳幼児、肥満 ・からだに障がいのある人 ・持病のある人 ・低栄養状態 ・脱水状態 ・体調不良 |
・激しい運動 |
条件が重なるほど熱中症が起こりやすくなります。体温の調節がうまくできない子どもや、暑さを感じにくい高齢者は特に注意が必要です。
3. 熱中症予防のポイント
熱中症は重症化すると命の危険もありますが、気をつけることで予防できます。予防のポイントをいくつかご紹介しますので、参考にしてみてください。
①水分補給
熱中症予防で最も大切なのは、こまめに水分をとることです。普段あまり水分をとらない人は、起床時、食事の時、入浴前後、寝る前などとタイミングを決めたり、1時間に1回飲むなど意識して水分をとるようにしましょう。一度に飲む量はコップ1杯(200mL)くらいが目安です。
また、汗をかくと水分と一緒にミネラルも失われます。日常生活では水やミネラル入りの麦茶で十分ですが、いつもより汗をかいたときや脱水状態のときは、体に速く吸収されるスポーツドリンクや経口補水液を飲みましょう。
〈スポーツドリンクと経口補水液の違い〉
スポーツドリンク | 経口補水液 |
糖分が多め | 塩分が多め |
いつもより汗をかいたとき 運動したとき |
熱中症の症状があるとき 下痢や嘔吐などの症状があるとき 大量に汗をかいたとき |
経口補水液のほうが、より速く体に吸収されるので、下痢や大量に汗をかいたなど水分が急激に失われたときには、経口補水液を飲みましょう。また、経口補水液はスポーツドリンクよりナトリウムとカリウムが多く含まれています。摂取制限のある疾患をお持ちの方はご注意ください。
②暑さを避ける
【屋外】帽子や日傘を活用し、なるべく日陰を歩くなど日差しを避けましょう。体調が少しでも悪くなったら、日陰や屋内など涼しい場所に移動しましょう。
【室内】感染予防のために換気しながら、エアコンや扇風機を使用し、室温が28℃を超えないようにしましょう。すだれや日射遮断フィルム、遮光カーテンなどを使用して窓から直接日差しが入らないようにすると、室温が上がりにくくなります。
③衣服を工夫する
外出時に帽子や日傘で直射日光を避ける以外に、衣服の素材や色、形に気をつけることで熱中症の予防につながります。素材は、通気性や速乾性の高い綿・麻・ポリエステルを、色は、熱を吸収しにくい白や淡い色のもの、形は、服と体の間に風が通るようにゆったりとしたものにするのがオススメです。
〈マスクの着用について〉
感染予防のために日常的にマスクを着用されていると思います。マスクを着用すると、熱がこもりやすかったり、のどの渇きを感じにくいことから脱水になりやすく、熱中症のリスクが高まります。マスク着用時は体への負担が大きい作業や運動は避け、こまめに水分をとりましょう。また、屋外で周囲の人と2m以上の距離がとれている場合は、マスクをはずして休憩するようにしましょう。
④バランスの良い食事をとる
暑くなってくると食欲が落ち、あっさりしたものや麺類だけの食事が多くなって、栄養バランスが偏りがちです。栄養バランスが偏ると、体力や免疫力が低下して、熱中症が起こりやすくなってしまいます。
暑い夏こそ、「主食、主菜、副菜」をそろえた食事が3食とれるようにしましょう。
【主食】 炭水化物 |
ごはん、パン、麺類など。からだを動かすエネルギー源です。 |
【主菜】 タンパク質 |
肉、魚、卵、大豆製品を使用したメインのおかず。筋肉や内臓など、からだを構成する材料です。 |
【副菜】 ビタミン、ミネラル、食物繊維 |
野菜、キノコ、いも、海藻などを使用したおかず。からだの調子を整えてくれます。 |
【牛乳・乳製品】 カルシウム、タンパク質 |
牛乳、チーズやヨーグルトなどの乳製品。骨や歯をつくります。 |
【果物】 炭水化物、ビタミン、ミネラル |
からだの調子を整えてくれます。 |
主食、主菜、副菜のほかに、果物や牛乳・乳製品をとることで、より様々な栄養素がとれます。しかし、どちらも毎食とってしまうと肥満の原因になるので、適度にとるようにしましょう。
4. 熱中症の予防に効果的な栄養素
熱中症を予防する食事の基本は、熱中症予防のポイントでお話しした「1日3食バランスの良い食事をとる」ことですが、疲労回復に役立つビタミンB1やクエン酸などを意識してとることで、より熱中症の予防に効果があります。熱中症予防のために、意識してとりたい栄養素と食べ物についてご紹介します。
タンパク質 | 働き | 人間のからだをつくるもとになる栄養素。 不足すると、筋肉が減って体力が低下して疲れやすくなったり、免疫力が低下します。 |
多く含む食べ物 | 肉、魚、卵、大豆製品 | |
とり方のコツ | 1食につき、肉・魚・卵・大豆製品のうち1つはとるようにしましょう。 | |
ビタミンB1 | 働き | 糖質をエネルギーに変えるために必要な栄養素。 不足すると、エネルギーがうまく作れず疲労物質に変化して体内に蓄積してしまい、疲れやすくなります。 |
多く含む食べ物 | 豚肉、うなぎ、大豆製品、玄米など | |
とり方のコツ | ねぎやにんにく、ニラに含まれるアリシンは、ビタミンB1の吸収を高めてくれます。豚肉をニラと炒めたり、豆腐や納豆にねぎをあわせるなどが簡単です。 | |
ビタミンC | 働き | コラーゲンを作ったり、メラニンの合成を抑えたりと美肌効果のあるビタミン。 ストレスへの抵抗力を強めたり、疲労を引き起こす活性酸素を除去してくれます。 |
多く含む食べ物 | ブロッコリー、赤ピーマン、キャベツ、かんきつ類、キウイなど | |
とり方のコツ | 熱に弱く、水に溶けやすいので、サラダや果物など生で食べるのがオススメです。 | |
クエン酸 | 働き | 疲労物質の分解を進めてくれるので、疲労回復効果があります。 また、クエン酸の酸味が食欲を増進させてくれるので、食欲が落ちてしまう夏にピッタリです。 |
多く含む食べ物 | 梅干し、レモン、酢など | |
とり方のコツ | 料理にレモン果汁をかけたり、りんご酢を水や牛乳で割って飲むと手軽にとることができます。 |
5. まとめ
熱中症は、毎日の生活でこまめに水分をとったり、暑さを避けるなど、しっかり対策をすれば予防できます。また、今回紹介した熱中症予防に効果的な栄養素を意識しながら、「主食・主菜・副菜」のそろった食事をとることも、熱中症の予防につながります。
熱中症の対策・予防をして、厳しい暑さを乗り切りましょう。
参考文献:「医者が教える熱中症対策」株式会社枻出版
熱中症環境保健マニュアル2018
「あたらしい栄養辞典」田中 明 蒲池 桂子 株式会社日本文芸社